舌苔(ぜったい)とは、舌の表面、特に舌の中央から奥にかけて付着する白色や黄白色、まれに褐色・黒色を呈する苔状の物質のことである。これは単なる汚れではなく、舌の表面構造、口腔内細菌、唾液分泌、生活習慣、全身状態などが複雑に関与して形成される生理的かつ病理的現象である。舌の表面には舌乳頭と呼ばれる微細な突起が密集していて、とくに糸状乳頭は細長くブラシ状の構造をしているため、剥離した上皮細胞や食物残渣、細菌が停滞しやすい。この構造的特徴により、舌はもともと舌苔が付着しやすい部位なのです。
舌苔の主成分は、剥がれ落ちた粘膜上皮細胞、食べかす、白血球、唾液成分、そして多量の細菌である。特に舌背部は酸素が届きにくいため嫌気性菌が増殖しやすく、これらの細菌がタンパク質を分解する過程で揮発性硫黄化合物を産生する。この物質は口臭の主因となるだけでなく、舌苔そのものを厚くし、色調変化を引き起こす要因にもなる。唾液は本来、口腔内を洗い流す自浄作用を担っているが、加齢、ストレス、脱水、口呼吸、睡眠不足、あるいは薬剤の副作用などによって唾液分泌量が低下すると、細菌や汚れが停滞しやすくなり、舌苔は急速に増加します。
また、歯磨きを行っていても舌の清掃が不十分な場合、舌苔は容易に蓄積する。歯面清掃のみでは舌苔の除去はできず、これが慢性的な口臭や歯周病菌の温床となる。食生活も舌苔形成に影響を与え、高脂肪食や高タンパク食、アルコール摂取が多い場合には舌苔が厚くなりやすい。一方で、柔らかい食事ばかりを摂取していると、咀嚼や食物による舌表面の物理的刺激が減少し、舌苔が自然に剥がれにくくなります。
さらに、舌苔は全身状態を反映することも多く、胃腸障害、糖尿病、感染症、免疫力低下、発熱時などには増加や色調変化がみられる。喫煙習慣がある場合には、タールやニコチン、熱刺激の影響で舌乳頭の角化が進み、黒色や褐色の舌苔が形成されやすくなる。歯科的には、舌苔は口臭の主要因であるだけでなく、歯周病や誤嚥性肺炎のリスク因子ともなるため、単なる見た目の問題として軽視すべきではない。舌苔は口腔環境と全身の健康状態を映し出す指標であり、適切な口腔ケアと生活習慣の改善が重要であります。
【監修】 歯科医師 中野真伍
2014年3月
大阪歯科大学卒業
2015年4月
大阪歯科大学付属病院にて研修
2016年4月
大阪市内の歯科医院にて研修
2021年4月
医療法人正歯会たまご歯科クリニックにて院長として就任
現在に至る